発達障害者のてんかん器質について

 

 娘がてんかん器質であることも考慮されませんでした。

ベンゾジアゼピン系薬の急な減断薬は、てんかん発作を引き起こします(註1)。発達障害の患者は元々てんかん器質を有する割合が高いため(註2)、急な減断薬でも発作を起こし易く、その症状が固定化し易いため、減薬には細心の注意が必要です。娘もてんかんの既往症があり、急な減薬でてんかん発作が起きていたと思われます。しかしそのまま放置していたために、その状態が固定化したのだと考えられます。更にてんかん発作自体も脳神経を傷つけ、認知障害を引き起こす引き金になったと考えます。

 

 

 てんかん発作とは、「泡を吹いて倒れてけいれんする」といった症状だけではなく (註3)、「怒りや興奮、失語、不安感、恐怖心、幻聴などの精神発作」も含まれます。減薬中に急に怒り易くなったり、暗がりや幽霊を怖がったり、失語状態になったり、幻聴を聞いたりするのは、てんかんによる精神発作が起きているからです。これらをただの禁断症状だと軽視してしまった為に、取り返しのつかないことになりました。

 

註1

 

① 『アシュトンマニュアル』 P93 より

 

   「特に高力価のベンゾジアゼピンからの急速な離脱により、リバウンド反応として

    てんかん発作を引き起こすことがあります。」

 

    *因みに、娘が飲んでいたリボトリールは、ベンゾ系薬の中で最強の力価でした。

 

②『知られざる万人の病 てんかん』 金澤 治  P185より

 

   「ベンゾジアゼピン系の薬剤  

   

   どれも “慣れ” の現象が起こります。・・・

   そして更に悪いことには、量を減らして行くときに早く減らし過ぎると、“反動”で発作* 

   がひどくなることがあります。そうなると、押す事も引くことも出来なくなり、ひどい副

   作用と発作とを同時に駆け込んでしまう事になります。」            

 

                           *てんかん発作のこと

 

③『てんかん学ハンドブック』P227 兼本浩祐 著 医学書院 より

 

   「長年にわたるベンゾジアゼピンの服用が、入院や事故など何らかのきっかけで急に中断

   された場合の例外的な反応として、棘徐波昏迷が急性・亜急性に出現することがある。錯

   乱様の症状を呈する場合もあるが、一定の見識が保たれたまま奇妙な行動をしたり、昏迷

   様となったりと、数時間の単位で症状が変動することも多い。」

 

     (棘徐波 = キョクジョハ  ある種のてんかん患者に見られる脳波の異常のこと)

 

 

 

 

 

註2『電子メディアは子どもの脳を破壊するか』金澤治 著 

                   講談社文庫 P223より

 

 

    「広汎性発達障害(PDD)にはその4~5割にてんかん性異常波が、2~3割にてんかん

     発作が見られるのです。」

 

 

 

註3『知られざる万人の病 てんかん』 金澤治 著 南山堂 P 79より

 

 

  「また(てんかん)発作は人前ではめったに起こらず、そして一般に知られているように、

   ただ、「泡を吹いて倒れてけいれんする」ような派手なものだけが発作ではないからで

   す。・・・一口に発作と言っても、その種類は数えきれない位たくさんあります。ですか

   ら、こういう発作はてんかんでなくて、こういう発作はてんかんだ、などと単純に区別は

   つきません。例えば夜寝ている時、突然起き出して布団の上で暴れ回るのが発作だったり

   することがあります。あるいは、毎朝起きがけに何回もシャックリばかりしている子供

   が、何年も後にてんかん発作だったことが分かることもあります。他にも、例えば突然眼

   の前にキラキラ輝くUFOが現れるのが発作だということもあります。こんな時には、本人

   も誰もこれをてんかん発作とは考えませんから、長い間見逃されていることもしばしばあ

   ります。」