減薬中の様子

 減薬を始めてからすぐに不眠、硬直(直立不動のまま同じ場所に何時間も立っている)、食欲不振、両手をパチパチ打ち鳴らすような動作が出始めました。殆ど口もきかなくなり、何を訊いても、何をさせようとしても上の空でした。また突然声を立ててケラケラ笑いだしたかと思うと、涙をためて黙って泣いていたりもしました。減薬以前はいつも母親にまとわりつき、大変な甘えん坊だったのが、声をかけただけで「わざとらしいから、構わないで。暫く放っておいて。」と怒るようになりました。次第に興奮と怒りが激しくなり「私の頭の中はどうかなってしまったのですか?」「私はお化けになったのですか?」「もう死にたい」といいながら母親に殴りかかるようになりました。また物を投げたり「お母さんなんか殺してやる」と言いながら包丁を向けてくることもありました。突然襲い掛かってくるので、いつも背後を警戒しながら家事をしていました。思考も荒れて、友人知人にも怒りを向け、「○○さんなんて許せない。殺してやる。」など攻撃的なメールを執拗に送るようになりました。減薬前の純粋で人懐こい性格が悪魔のように豹変してしまいました。又何度か失踪も繰り返したので、業者に頼んで玄関に内鍵をつけて貰い、警備会社にGPSによる保護も依頼しました。これらは明らかに減薬を急ぎ過ぎたことによる失敗でした。

 

 

 この時は減薬を開始してから3か月間で

 

ジプレキサを 7.5mを 5mgに
リボトリール 1.5mを 1mgに
ソラナックス 0.8mgを 0.4mg まで減らしました。
 個人差があるので、「多い、少ない」の参考にはならないと思いますが、発達障害の特性をもつ娘にとっては早過ぎる減薬でした。また 3 剤を同時に減らしたのもよくなかったと思います。
 深く反省し、ソラナックス以外は元に戻し、そこから16分の1ずつ慎重に減薬することにしました。(今から思えばソラナックスも少し戻した方が良かったと思います。) しかし怒り(易怒性いどせい)はなかなか治まりませんでした。見かねた夫が投薬方法を変えることを思いつき、その通りやってみると嘘のように症状が治まり、明るく積極的な、減薬前の状態に戻すことが出来たのです。会話もできるようになり、旅行も外食も可能になりました。酷いメールを送った相手にも、謝りの手紙を自分で書いて送っていました。このままの調子で続けていけば、無事に断薬までこぎつけるだろうと嬉しくなっていた頃のことです。
 ネットで精神科医療や減断薬について書かれた著書を見つけたので、早速取り寄せて読んでみると「減断薬は必ず医師の指導のもので行うように」とありました。確かに1度減薬に失敗しており、自己流ではどこか不安もあったため、著者でもある減断薬専門クリニックの医師に指導をお願いすることにしました。
 それ以降、医師の指導に従い減薬を進めていきました。しかし予想以上に減薬のスピードが速く再び、食欲不振、不眠、怒りが出始めました。せっかく 16 1 ずつでうまくいっていたのに(このままで本当に大丈夫なのだろうか)ととても不安になりました。しかし(このやり方は、著書にも書いてある通り、医師本人がアメリカの専門施設を視察し、充分な治験を経て考え出した最良のプログラムなのだろう)と思い直し、そのまま従う事にしました。暫くすると今度はうつ伏せのまま1日中寝たきりになり、失語状態にもなりました易怒性もどんどん激しくなり、言葉で表現できない分、暴力や物を投げて訴えるようになりました。不眠と食欲不振も更に強くなっていきました。また日に何度もお風呂に入り、湯船の中で排尿したり、口の中の食べ物を吐き出したり、絶叫しながらお湯を激しく叩いて暴れるようになりました。こうした症状が出ていることを指導医に伝えたのですが、医師は「どうしてなんだろうね。」と不思議がりながらも、減薬を中止しないばかりか、更に進めていきました。