娘の怒りを、怒りで抑えようとしたこと

 

 これは絶対にやってはいけないことでした。

いくら娘をしかったり、怒鳴ったり手を挙げたところで火に油を注ぐだけでした。反対 にその興奮によって怒りの神経回路が確立してしまい、今度はささいなことにでも怒り が出やすくなることに漸く気がつきました。まさしく怒りによるキンドリングが成立し てしまったのでした。脆弱性を獲得してしまった脳は、あらゆることで簡単にキンドリ ングされることを痛いほど学習しました。病気が原因だと分かっていながら、厳しく怒 ってしまった私は救いようのない母親です。 

 

でも「どうして病気と分かっていながら、娘を怒ることを止められなかったのか。」 

 

 深層心理についての研究者である、故・矢沢フレイ伸江先生の方法で考えてみると、そ の原因が分かってきました。私の怒りは、娘に対する怒りではなくて、実は娘がこうな ってしまった、その根本原因に対する怒りや憎しみだったのでした。その感情があまり にも強く私の心を占めてしまったため、原因に対してのみならず結果にまで、復讐心の ようなものが及んでしまったのでした。思考の混乱です。従って根本原因を冷静に分析 解釈することで、段々と感情が整理され娘を怒らないでいられるようになりました。怒 りや憎しみの感情、また復讐心は、本当にろくなものではありません。娘はきっと心の 中で全て分かっていたと思います。以前、独り言で「私を躾ようとしたって駄目だから ね」といっていたことがありました。